第2章借地権・借地編
借地人さんからよくいただく質問・ご相談 

借地権を譲渡したいのですが

借地権には地上権と賃借権の2種類があります。地上権であるケースは少なく、賃借権の譲渡となると、地主の承諾が必要となります。

地主の承諾が得られず、建物の譲渡ができない場合には?

裁判所の許可を得て譲渡する方法もあります

地主が土地(底地)を売却した場合はどうなりますか?

土地が売却されても、借地権(地上権、賃借権)の登記がされていれば、新たな地主に対しても、借地権を主張できます。借地権登記がなされてなくても、借地上の建物が登記されていれば対抗できます。

借地権はいくらで売れますか?

底地の売買で答えたように目安はありますが、まず初めにその地域の特性、地主の承諾をもらえるかなどの問題があります。地主の承諾料などを差し引くと実際の手取りは借地権割合にならない場合が多いです。借地権問題の解決法は複数存在していますが、それぞれに長所、短所が存在します。自身の借地権の問題解決にはどの方法が適切かを吟味し、解決法を探っていく必要があります。

地主様の選択肢
1.現状維持
「測量をすべて行い、現状のまま底地を持ち続ける」・測量経費がかかる・相続税が莫大にかかる・借地人との人間関係が継続され、予期せぬ問題が起こる可能性がある。
2.売却
「現況のまま売却」「当社による買取り」
  • ・売却部分の測量費用を抑えられる
  • ・相続税の納税資金を確保できる
  • ・相続税の節税効果・借地人との人間関係の煩わしさがなくなる
  • ・底地を現金化することで、相続のときに財産分割しやすくなる
  • ・底地を売却した資金で、優良資産に買い換えることで、所得が向上する可能性がある。
  • *メリット:早期の売却が可能・借地人との交渉が不要 
  • *デメリット:借地人へ売却するより売却価格が安くなる
3.不動産会社による底地管理
・測量費用がかかる・相続税が膨大にかかる・地代の値上げ交渉や賃料・更新料の受領等のサポート
4.借地人に売却する
  • *メリット:最も高値で売却が可能
  • *デメリット:◎価格権利調整に時間がかかる◎売却の準備費用がかかる◎借地人に購入意思が必要◎
5.共同売却する
  • *メリット:比較的高値で売却できる ・借地人に買い取り資金が無い場合でも売却可能
  • *デメリット:価格権利調整に時間がかかる・借地人の同意、協力が必要・売却の準備費用がかかる
6.借地権を買い取る
  • *メリット:資産価値が向上する、その後の処分、利用がしやすくなる・担保価値が上がる・借地人との関係が解消される・地代などの管理が不要になる
  • *デメリット:買取り資金が必要・地代、一時金収入が無くなる・固定資産税の負担が増える・借地人の意、協力が必要
7.借地引き分け法
  • *メリット:地主、借地人ともに小額資金でできる・処分、利用が容易になる・担保価値が上がる・借地人との煩わしい関係が解消される・地代等の管理が不要になる・一定の要件を満たせば税務上譲渡が無かったものとみなされ、課税の繰り延べが可能
  • *デメリット:地代、一時金収入が無くなる・固定資産税の負担が増える・借地人の同意、協力が必要・土地の状況によって成約される・土地が小さくなる・上の建物を取り壊さなければならない
8.底地更地交換法/借地権更地交換法
  • *メリット:地主、借地人共に多額の手持ち資金がなくても可能・処分、利用が容易になる・担保価値が上がる・借地人との関係が解消される・地代等の管理が不要になる・不要な土地を処分できる(借地権更地交換法)・土地上の家屋を取り壊さなくて良い・一定の条件を満たせば税務上譲渡が無かったものとみなされ課税の繰り延べが可能
  • *デメリット: 地代、一時金収入が無くなる・固定資産税の負担が増える・借地人の同意、協力が必要
借地人の選択肢
1.底地を購入

地主が底地の売却を希望する際に応じる、もしくは借地権が設定された土地を利用したい場合などにこの方法を使用します。 通常、借地権を第三者に売却する場合には、売却価格の10%以上を譲渡承諾料として、地主に支払う必要があります。借地人が底地を買い取って所有権として売却できれば、譲渡承諾料を支払う必要がありません。

  • メリット:土地が完全所有権になることによって担保価値が飛躍的に増しますので、建物の建て替えなどの有効活用などが容易になり、借地権よりも選択肢が広がることが挙げられます。
  • デメリット:底地を買い取るための資金が必要になることです。

よく言われることですが、底地と借地権の価格は単独の時よりもお互いが合算したときのほうが価格(価値)が上がります。 仮に時価が坪100万円で借地権割合が60%の土地があったとします。この場合、借地権を第三者に売却しようとした場合の坪単価は100万円×0.6=60万円にはなりません。通常はこれから20~30%ダウンした価格になります。また底地を第三者に売却しようとした場合の坪単価も40万円にはならず、10万円~20万円とダウンしてしまいます。

2.借地権を第三者に売却

通常、借地権を第三者に売却する場合には、売却価格の10%以上を譲渡承諾料として、地主に支払う必要があります。 また底地の購入で説明したとおり、借地権を第三者に売却する際の価格は更地に借地権割合を掛け算した価格よりも安くなる可能性が高いと考えられます。 不動産を購入する多くの人は所有権を望んでいることと、建物の新築、改築、増築時などに地主に承諾料を支払うことに対する抵抗感が強いからです。 また借地権付建物に対する融資条件も所有権のそれと比較して格段に悪くなります。 ただし、地主が寺や神社などの宗教法人の場合には、個人地主の場合と比較して前記のデメリット面が弱まる傾向にあります。

3.借地権を地主に売却

借地人の賃貸借期間が数十年に及ぶことも珍しくありません。 その場合には、地主に借地権を買い取ってもらう、もしくは底地と借地権の同時売却という手法が望まれます。 一般的に地主は先祖代々の土地という意識が強く、土地を売却することに躊躇する傾向がありますので、同時売却よりは借地権を買い取ってもらうほうが可能性が高いと言えます。 ただし、地主が借地権を買い取る現金を保有していないことも少なくありませんので、この手法が実現するか否かはタイミングしだいと言えます。 この手法を実行する際には借地人が直接、地主と交渉するよりは仲介者を立てたほうがベターと思われます。 「安い地代で土地を貸しているのだから、借地人が土地を使わないのであれば、更地にして返すのが当然だ」と考える地主も少なくありません。 したがって、第三者が関与することによって感情的なしこりをほぐすことから交渉を始める必要があります。 また、借地権の更新料を支払わずに法定更新を重ねてきた場合などは、この手法を採用できたとしても、価格面で不利な条件を提示されることを覚悟すべきです。日頃から地主とは可能な限り、良好な関係を構築しておくことが求められます。

4.借地権と底地を第三者に同時売却

底地と借地権の価格は単独の時よりもお互いが合算したときのほうが価格(価値)が上がります。 従って、同時売却という手法を採用できれば、借地権も底地も売却価格としては他の手法よりも高くなります。 ただし、この場合において借地権、底地の割合に関して、借地人、地主間でもめることが少なくありません。 割合のベースとなるのは国税庁が公表している路線価図に記載されている借地権割合ですが、それに更新料の支払いの有無、権利金の授受の有無、借地権の残存期間などを勘案して、割合を決めていきます。 例えば:土地の売却価格が坪100万円で借地権割合が6割の土地あったとします。 借地権者がこれまで更新料を支払わずに今日に至っている場合には、底地割合を1割加算して、底地権、借地権をそれぞれ5割である坪50万円で計算した価格とする考え方です。 この手法は、地主、借地権者の両者ともが売却を同意しなければならないため、タイミングが限られていると言えます。 多くは賃貸借の更新時期や、地主・借地権者に相続が発生した時期です。 タイミングがあえば、地主・借地権者の双方にメリットがあるため、双方はこの手法が可能か否かを検討すべきであると思います。

5.借地権と底地を交換

底地と借地権を等価交換し、土地を一定の割合で地主と借地人の間で分ける方法です。 底地(借地)の面積が大きく、建物が乗っていない土地の面積が広く、接道条件が良い場合などに採用されます。 例えば国税庁公表の借地権割合が60%で面積が80坪の以下のような土地があったとします。 借地権と底地を交換し、借地人の自宅が建っている部分の敷地40坪分の土地所有権が借地人名義となり、庭部分の敷地40坪分の土地は地主が完全所有権を取得します。 借地権割合は60%ですが、10%分を地主に対する名義変更料と考え、権利割合を50%づつとすることが実務上の慣行となっていることが少なくありません。 上記例では地主は40坪分の敷地を有効利用して、アパート等を建築したり、駐車場とすることが運用したり、更地として第三者に売却するなどの手法をとるケースが多々見受けられます。 所得税法58条により、借地権と底地を交換する際には、一定の条件を満たせば譲渡所得の交換の特例を受けることができます。 これは固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例であり、これを固定資産の交換の特例といいます。 この特例の要件の一つに、交換する資産は互いに同じ種類の固定資産でなければならないとする要件があります。 同じ種類の固定資産の交換とは、例えば、土地と土地、建物と建物の交換のことです。 この場合、借地権は土地の種類に含まれます。 したがって、地主が建物の敷地として貸している土地、いわゆる底地の一部とその土地を借りている人の借地権の一部との交換も、土地と土地との交換になり、その他の要件にも当てはまれば、固定資産の交換の特例を受けることができます。 詳しくは、国税庁の以下のサイトで御確認を御願いいたします。 http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3502.htm

6.地主と共同事業

商業地で容積率が高い場合に行われる手法です。 借地権者が所有している建物をビルやマンションに建て替え、土地と建物を地主と借地人が共有することになります。 建物の建築資金をデベロッパーやゼネコンが提供し、建物完成後には、地主・借地権者・デベロッパーもしくはゼネコンが資金負担の割合に応じて専有床面積を保有するという事業手法を採用することが一般的です。 資金負担なし  借地人と地主は建設事業費を自己資金で用意する必要がありません。 賃貸借関係の解消:借地人と地主は共同事業を行う機会に賃貸借関係を解消し、土地は地権者の共有関係に移行していきます。 専門家のノウハウ活用:建物の設計、行政及び近隣折衝、テナントの誘致等の専門的あるいは複雑な業務をデベロッパー等に依頼できます。 収益の安定性:建築事業費を負担する必要がないので、還元された床を賃貸物件として活用できれば、安定的な収益を確保できます。 相続対策完成された建物は区分登記されますので、相続が発生した際には遺産分割がしやすくなります。 新たに建築する建物に関して、地主やデベロッパーと合意するまでにかなりの時間を要してしまうことなどです。 関係者の数が多ければ多いほど、その傾向が強まります。 また、借地人と地主の関係が良好で、駅近くもしくは幹線道路沿いの商業地がこの手法の適地と考えられます。 さらに、この手法を実行する際には、建築事業資金を負担するデベロッパーなどに事業のプラン作成と実行支援を完全異存せずに、数字を中立的に検証できるコンサルタントにコーディネートを依頼すべきです。